侵食・高潮事業の事業概要

◆清水海岸の位置

清水海岸は、駿河湾西側に位置する延長9.8kmの砂礫海岸です。安部川河口から供給される土砂が波の作用によって漂砂となり、海岸沿いに南から来たへ流れることで砂浜のバランスを維持しています。

三保松原は世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成遺産の一つに登録されました。


事業実施の経緯

 清水海岸は、駿河湾西側に位置する延長9.8kmの砂礫海岸で、日本三大松原のひとつである「名勝三保松原」や産業及び観光の主要幹線である国道150号を背後に控えています。また、富士山や伊豆半島を望める風光明媚な海岸です。

 三保半島は安倍川から供給される豊富な土砂により長い年月をかけ形成され、清水海岸もかつては全域100m以上の砂浜幅を有していました。しかし、昭和30年代の高度成長期に安倍川において大量の砂利採取が行われた結果、昭和40年頃から安倍川河口部に隣接する静岡海岸(駿河区)で海岸侵食が発生しました。昭和43年に安倍川における大規模な砂利採取を禁止されて以降、安倍川に近いところでは砂浜の回復も見られるようになりましたが、その後も年平均270mの速度で東側に侵食域は拡大していきました。

 砂浜を失った海岸は直接波浪が護岸に作用することになり、毎年のように背後の国道が被害を受けるようになりました。侵食域の拡大は、その勢いを落とすことなく進行し、昭和50年代後半には清水海岸に到達しました。

 このままの速度で侵食が進行した場合、近年のうちに三保松原まで侵食が進行することが予想され、地域の貴重な財産である「羽衣の松」の流出を危惧する声が高まり始め、静岡県では平成元年度から清水海岸の高潮対策事業に着手しました。

 平成25年6月に三保松原を構成資産に含む形で「富士山」が世界文化遺産登録リストへの記載が決定しましたが、その際、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議(イコモス)」により景観が阻害されていると勧告を受けました。景観・防護が調和する景観改善の取り組みが急務となっています。

 清水海岸の空中写真の変遷



事業概要

清水海岸の三保地区は、「日本の白砂青松100選」に選ばれているほか、国指定名勝や県立自然公園にも指定されるなど、県内屈指の観光地です。また、地域特産のシラス漁や、地引き網といった漁業も盛んであり、事業実施にあたってはこれらに配慮する必要がありました。

このため、学識経験者や地元関係者、行政関係者からなる「白砂青松検討委員会」などで工法の検討を重ねています。


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天女の浜辺を守るために
清水海岸 侵食・高潮対策事業 事業概要 (2.00MB)

侵食対策の考え方

清水海岸の三保地区は、「日本の白砂青松100選」に選ばれているほか、国指定名勝や県立自然公園にも指定されるなど、県内屈指の観光地です。また、地域特産のシラス漁や、地引き網といった漁業も盛んであり、事業実施にあたってはこれらに配慮する必要がありました。

このため、学識経験者や地元関係者、行政関係者からなる「白砂青松検討委員会」などで工法の検討を重ね、まだ砂浜が残されている段階から対策に着手し、ヘッドランドと養浜の組み合わせにより、背後地への越波被害を防止する最低限の砂浜幅を確保することを目的とした対策を実施しています。

現在は、激しい海岸浸食から背後地の人々の生活を守るとともに、雄大な富士山の前に広がる砂浜と松、駿河湾が織りなす美しい景観を守るため、対策の状況をモニタリングしながら検討を重ね対策を実施しています。学識経験者、地元関係者、関係団体、行政関係者が協力して、海岸保全に取り組んでいます。関係者からなる「三保松原景観改善技術フォローアップ会議」と「清水海岸侵食対策検討委員会」の連携&情報共有を密に行い、対策実施の効果を確認しながら、PDCAサイクルに基づいた順応的な管理を行い、対策見直しの必要性などについて定期的に議論しています。

三保松原白砂青松保全技術会議 清水海岸侵食対策検討委員会

 将来的に構造物に頼らない海岸を実現するために・・・


海岸保全の目標は、50年確率波浪および異常潮位に対して、越波被害が生じないようにすることです。清水海岸における防護上の必要砂浜幅は60~80mです。

長期目標として、将来的に構造物に頼らない海岸を実現するため、常に土砂供給の連続性を確保するよう努めています。また、砂浜が自然回復するまでの間、景観的に配慮した最小限の施設により、砂浜を保全することを短期・中期目標としています。景観を守るため、消波堤など既存の対策から機能を置き換えてL型突堤を設置し、L型突堤設置後に消波堤を撤去する計画です。対策状況のモニタリングを強化し、結果に応じて養浜の投入位置や投入量の調整を随時行っています。

長期目標 将来的に構造物に頼らない海岸を実現するため、常に土砂供給の連続性を確保するよう努める。
短期・中期目標 砂浜が自然回復するまでの間、景観的に配慮した最小限の施設により、砂浜を保全する。
短期 4基の消波堤の内、羽衣の松に近い2基をL型突堤に置き換える。
中期 残りの2基の消波堤をL型突堤に置き換える。